2013年08月01日

戦争のことなんかわからないよ


早いもので1学期が終わり、次男が学校から帰って来た。
明日から楽しい夏休みというのに、何だか不機嫌だ。こういうときは決まって何か嫌なことか心配なことがあるときだ。

どうしたのか尋ねると、どうも平和授業で作文を書かなきゃならなくなったらしい。
はっは~、苦手な作文でしかも全校集会で読まなきゃならないから不機嫌だったのか。わかるよ~、オレも子どもの頃はその手の作文が苦手だったから。
しかもジャンケンで決まったので、それも不愉快な原因みたいだ。とは言うものの、やはり決まった以上責任を持って書かなきゃならない。担任の先生も手助けしてくれるが、ある程度は骨格ができていないと手の施しようがない。

オレ「で、どんなことを書く?」
二男「…」
オレ「原爆が投下された日だから原爆をテーマにする?」
二男「…」
オレ「やっぱ戦争反対とか言っちゃうわけ?」
二男「…」
オレ「何とか言えよ!」(キレてどうする)

まぁ、こういうときはダンマリなのが家の男ども。何とか相方が聞き出して「考えていることはあるみたいよ」と軽くフォロー。
とうとう1文字も書くことなく学校に行った。帰ってからも特に作文を仕上げる様子でもなく「どうせ言っても反抗してしないだろう」と気にしない振りを決め込むことにした。
翌日になってもする様子はない、その翌日も…
とうとう担任の先生から心配の電話が入ってしまった。
「いや、本人も書こうと思っていることはあるみたいなんですが文章にならないようで…」
相方が謝っている。電話が終わると

「先生が明日、作文持って学校に来てっち!」

あのフォローをした人物とは思えないほどの有無を言わさぬ迫力で子供部屋に向かって行った。触らぬ華音に祟りなしとはこのこと。こうなると強制的に書かされるに相違ない。
とりあえず、考える切っ掛けになるかなぁ、と思って「核兵器を廃絶すると平和になるか」と訊いてみた。
すると関係ないはずの長女まで参加して「平和にはならない」と言う。

「その心は」

「核兵器は兵器の種類でしかないから」
「そうだよ、ミサイルじゃなきゃ銃で、銃じゃなきゃ刀や剣、人間の体だって武器になるもん」
「だから戦争はなくならない!」(オッ、オウ)

「なんだ、お前ら結構現実的に考えてんのな」
「そんなの冷静に考えれば誰でもわかるし」それがわからん人もこの世の中多いのさ。
つまり核の抑止力は子供でもわかる理屈ということなんだろう。

「それじゃさ、オバマ大統領が核廃絶を公約にしてるわけだが、もしそれが本当に現実のものとなったらどの国が最も得をするだろうか」
さすがにこれの答はすぐに出てこないようだ。順当に考えると世界情勢は米国に有利になる。

「通常兵器で最も強い国はアメリカだからだ」
これを聞いたら納得という顔をした。戦略核兵器出現以前の世界に戻るということなんだ。同時に軍事のパワーバランスが崩れると戦争を誘発する可能性もある。

「日本の原爆投下以降、世界では核による戦争は起きなかった。寧ろ、起こせなかったと言っていいだろうな。何故なら相討ちになる可能性が大きいからだよ。しかも戦争のリスクは非常に大きいから、どの国も戦争は避けたいのが本音だ」
「でも戦争はなくならないのは」
「戦争は外交のワイルドカードなのだが、ちょっと見せ過ぎたんだな」
「さっき、核戦争は起きていないって言ったけど、一回核戦争になりかけた事件があるんだよ」
この事件とは「キューバ危機」のことだ。この事件が核戦争になりかけた原因はキューバ側の事情によると考えられる。加えてアメリカがキューバに核弾頭が配備されたことを把握しておらず、強硬な姿勢を見せたからだ。誤解が誤解を生み、一歩間違えれば米ソ全面戦争になった可能性がある。尤もソ連は米国との戦力差から戦争は避けたかったし、米国もかなりの打撃を被ることから戦争は本意ではなかった。

「北朝鮮ですら、核を交渉のための手段としか見ていないだろう。彼らには望むカードを見せてくれればいつでも核開発をやめる用意があると思うよ。それくらい核も戦争もリスクが大きいのさ」

「ねぇ、北朝鮮の欲しいカードってなんだろ」

「北が欲しいのはエネルギー問題の解決じゃないかな。食料問題もあるけどね」
いつの間にか身を乗り出して聞いているのは、関係のない長女である。聞いてほしい次男は少し飽きてきているようだ。

「僕、戦争のことなんかわからないよ」

まぁ、無理もないよな。小学5年生にはちょっと高度な話だったか…
恐らく「戦争」というものの実体が分かり辛く、だからこそ文章にならないのだろう。その日の晩遅くに不完全ながらも書き上げたようだ。小学生の「平和作文」なんてものは「戦争がなくなれば良いと思います」とか当たり障りのないものになるのは、そもそも国家間の外交問題とかが理解できないからだろう。そもそも、核兵器廃絶=世界平和みたいなお花畑脳じゃないってわかっただけでも良しとするか。
子どもたちに意外だったのは、日本が「準核保有国」という認識だ。
「少なくとも世界からはそういう認識だよ。かと言って原発=核兵器でもないんだな」
日本で核兵器が作られる可能性は高速増殖炉「もんじゅ」と「常陽」の存在が大きい。一般的な商用型軽水炉では核兵器に使用できるほどのプルトニウムが得られない。
それでも日本が核弾頭を保有していないのは、アメリカとの交換条件で核の傘に入るためだ。核の傘から出るときは核を保有するときなんだよ。これが日米安保条約を結んだ時の条件だった。
だから、日本がその気になれば1か月以内に核を配備できるだろうね。

「でも一番怖いのは国民が戦争を迎合するときだろうな。実際、太平洋戦争の発端はそこに原因がある」
尖閣諸島や竹島問題があるだけに「もし歴史認識がそういうことなら、我々は冷静に粛々としなければまた第2次世界大戦のようになるぞ」と言うと、子どもたちも「なるほど」という顔をした。よしよし良い子たちだ。

少し考えてみよう。
歴史の認識では「太平洋戦争」には何故「反省」という認識が付き纏い、他の戦争にはそれがないのか。もし戦争そのものが「悪」なのであれば過去の戦争全てにそういう認識でなければならないのではないだろうか。何故、反戦論が特定の戦争を軸に語られるのか。そこに疑問を向けなければ正しい歴史認識は有り得ないのではないだろうか。

「わたし『キューバ危機』のこと調べてみようかな」と関係のない長女が言う。
繰り返すが長女はこの問題に関係ない。

「お前も作文あるんじゃなかたった?」

「うあー人権作文がぁ~」

「人の権利はジンケン、犬の権利はケンケン」と言ったら

「お父さん、つまらんこと言いなさんな!」

怒られちった(テヘペロ)






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Posted by *clear* at 11:37│Comments(0)受験・進路
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