2012年08月20日

理科の自由研究


夏休みも残り僅か。
高校はもう2学期が始まるんだって?
高専はまだ休みだが、長男は基本情報技術者の講義があるので学校へ。試験そのものは10月だけど、情報系資格の登竜門とはいうものの、合格率は27%ほど。しかも1年生で過去の合格者は3人しかいない。
そういうこともあって、夏休みに入って勉強しまくっている。どこに行くにも分厚いテキストを持って行くほど。

で、この時期、小学生なら工作が、毎年頭痛の種なんだが、今年は長女の理科が加わった。
その理由なんだが、今年から必ず実験をしてレポートを纏めること、という条件になったからだ。
こうなっちゃった理由は、恐らく毎年のレポートがネットからのパクリだったり、友達から写させてもらったりが多いからなんじゃないかと思う。
実験しなさい、となれば何かしらしなきゃならないから、確かにパクれないだろう。
しかも、手書きレポートじゃなきゃダメだときた。
「先生に訊いたらPCで作っちゃダメだって」
あくまでコピー防止のためらしいなぁ。

それで、長女と何について研究するのかテーマを考えていたんだが、学校でやるのと家庭でやるのとではかなり勝手が違ってくる。
大体、試薬とかどうするんだよ。

「学校の理科室を使わせてもらったり、試薬を分けてもらえないの?」
「それもダメだって」
「…(絶句)」
「でさ、おまえ何をするんだよ」
「う~ん、塩酸に溶かしたアルミニウムをまた純粋なアルミニウムに戻す実験を…」

大学かっ!

「雷が電気だと証明して…」

フランクリンかっ!

中学生には無茶です。
正直ね、家庭でできることって制約も多い。第一、化学は劇薬になる薬品なんか購入しても、あとの使い道がない。生物だって顕微鏡が各家庭に常備されてはいないだろう。
そこが創意工夫だ、と言われても生徒本人の判断じゃなくてだな、もう親の判断じゃね。子供の裁量範囲を逸脱してるんじゃあないか。

そこで幾つか研究選択の指標を立ててみた。

1. 長期間かかる実験は避ける
2. 予算が高額な実験を避ける
3. 危険が伴う実験を避ける
4. 実験方法が思い付かないあるいは高度な研究を避ける
5. 他の人がやったこともないような実験やテーマを見つけようとしない

どれも当たり前だと思う。特に5番目は大事だ。全部独自の実験をしようなどと思うと、実験をする前に夏休みが終わってしまうぞ。
こういうときに大事なのは、普段疑問に思っていることや教科書でよくわからなかった内容の再確認で実験をしてみることだ。まずそういう事柄を箇条書きにしてみよう。それに対して「どうやって確かめるか」方法が見付からなかったり、難し過ぎる実験を削除していき、候補を絞り込んでいく。
そこでオレからの提案は「化学電池を実験してみよう」だ。
うわ、めっちゃオーソドックス。
とは言うものの、イオンを理解する上で非常に重要な位置にあるこの実験。しない手はない。しかも家庭で可能な実験でもある。
ひとつ問題なのは、この内容が中学3年生の内容だということ。
つまり今までの理科の知識だけでは思い付かないのだよ。6年生で発電機の実験をやっているので、ファラデーの電磁誘導理論は知らなくても、体験的にモータが発電機になることは理解している。じゃあ、乾電池はどんな理屈で電気を発生させるんだろう、という疑問からでないと「化学電池」へ持って行くことができない。
最も簡単なところではボルタの電池からスタートさせるのが良いだろう、と考えた。ダニエル電池は塩橋を工夫しなきゃならないし、材料もセルロースチューブだとか硫酸を用いるので気軽にできる内容じゃなくなる。その点、ボルタ電池は硫酸でなくとも実験できるので、家庭で比較的行い易い。

そこで最も簡単なボルタ電池実験をやるのだが、予備知識としていくつかやらなきゃならないことが出てくる。

特定に電解質水溶液に良く溶ける金属はイオン化傾向が大きい。反応しない金属はイオン化傾向が小さい。
イオン化した金属は電子を放出し、陽イオンは水溶液に溶ける。
放出された電子は導線を伝わり、反対側の電極に到達するが、イオン化傾向の小さい金属内で陽子をもらえず、水溶液の中のイオンと結びつき安定化する。還元→酸化(酸化還元反応)のプロセスで電気が発生する。
亜鉛と銅の組み合わせで還元酸化させると、亜鉛は2個の電子を出し、1molの亜鉛から251kJのエネルギが得られる。これが電気である。
イオン化傾向の大きい金属が負極で、イオン化傾向の小さい金属が陽極になる。

Zn2++2e-|HCl|Cu+
あっ、この内容は高校の理科だ。
亜鉛から出た電子は陽極に到達して2H+と結合して水素を発生させる。このサイクルが続く限り電気を発生させるのだが、水素が発生すると銅版上で勝手にイオンになってしまい電気を発生しなくなる。亜鉛の方でも亜鉛イオン自身がイオンになるのを邪魔してしまう。これが分極という現象だけど、これを解決しようとしたのがダニエル電池だ。
実はこのイオンと電気は奥が深い。高校生でも理解が難しい部類らしい。そのクセ、実験が簡単なので自由研究に良く選ばれる。
使う金属は銅Cuと亜鉛Znが一般的だが、これは安価に入手できるからだ。マグネシウムMgの組み合わせもあるし効果的だけど、マグネシウムリボンが25gで4,000円くらいしちゃう。25gもいらないし。
金属のイオン化はすでにわかっていることなので、実験しなくてもどの金属を組み合わせれば効果があるかはわかっている。

理科の自由研究

貸そうかな、まああてにするな、ひどすぎる借金と覚えたんじゃないか?
この表で言うとCuより右側は酸にほとんど解けないか全く溶けない。だから最も反応するリチウムLiと最も反応しない金Auとの組み合わせなら、かなり効果的な電池になるだろう。そのかわり高価な電池にもなるがな。陽極のグループでは銅が最も安価で、陰極側ではアルミニウム、亜鉛、マグネシウムあたりが予算的に妥当だってわかる。

水溶液は色んなもので試せる。
1799年にボルタが製作した電池は硫酸と食塩水だった。酢やクエン酸(レモン電池はこれ)なんかでも十分電気が発生する。塩酸は10%以上のものは劇薬になるので、薬局で売ってくれなくはないと思われるが、毒劇物譲受証に氏名と住所を書いて押印しないと販売してくれない。身分証明書を求められることもあるようだけど、もともと未成年じゃ購入はムリだろう。
電解質になる水溶液ならかなり身近なもので電気が発生することが確かめられるはずだ。
水溶液を特定せず、果物や野菜、調味料などで変化を調べると、これはこれで面白い。わさびやマヨネーズなどでも電気が発生するか、何てのもこの手の実験の醍醐味かもね。
ただし実験に使った食材は食べられないので、使うのは最小限度にしておこう。

先生の考えもわからないわけではないけれど、やるとなると難しい内容が多い。
こういう課題の場合、学校のサポートがないと難しいんじゃないだろうか。100名以上いて、それが違う実験をするんだとしたら、目が行き届かないとか、スケジュール的にムリだとかあるんだろうけど、生徒や家庭に丸投げされても荷が重い。
何か改善策を望みたいよねぇ。




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Posted by *clear* at 11:38│Comments(0)受験・進路
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